2024-04-19 21:46:44
2023/12/21
石川善一53才です。
これは世界一のネクタイ。
これほど素晴らしいものは、
この世に二つと無いと、私は心から思っている。
何十年も袋に入った新品の状態で保管していたが、
ようやく開封した。
母を連れて父から逃げた18才の頃は、お金がない恐怖を感じていた。
*「夢の続きが始まりました【第三十五章 (主役) 】」参照*
(今は父のことを恨んではいない)
*「夢の続きが始まりました【第七十四章 (父) 】」参照*
元々、贅沢を知らない母。
いや…贅沢とはどのような事か忘れていたんだと思う。
「今、自由だから幸せ」
「あんたも健康だから幸せ\(^O^)/」
……………………………………………
全財産19万円で再スタートした厳しい暮らしも、
徐々に緩和された19才の誕生日。
母は私が好きなポテトチップス3袋と、三ツ矢サイダーをくれた。
暮らしは安定し始めたが、ホッとしたのか、
母は体調を崩す事が増えていた。
「仕事も休みがちで収入も少ないから…」
「こんな誕生日プレゼントでごめんね」…と母は言った。
でも私は心から嬉しいと思った。
自分で買うポテトチップスよりも100倍おいしかった。
自分で買う三ツ矢サイダーよりも100倍おいしかった。
……………………………………………
当時、母は、ユニオンチーズという会社で働いていた。
今、私が務める会社に向かう道路沿いにあるその会社。
休みがちな母を見捨てず雇い続けてくれてありがとう…と、いつもと思う。
母は慰謝料が入っても贅沢しなかった。
寒い冬に履くモコモコ靴下には穴が開いていた。
いつでも自分の事を後回しにするのに、
私にはいいモノを食べさせようとしていた。
私は、母の誕生日にモコモコ靴下と手袋を買った。
……………………………………………
22才の誕生日、
母はネクタイをくれた。
「セール品だけど、あんたに似合うかな…と思って (^o^)」
…………… 私はこの日の事をずっと後悔している。
…………… 31年経った今でも心残りなのだ。
その時、私は学童保育の先生だった。
…悪気はなかったのだが… 私は何も考えずこう言ってしまった。
「学童保育にネクタイなんて必要ないよ」
……………「あぁぁ、そ、そうだよね~ごめ~ん… (^_^;) 」
……………「じゃ、ケイ君(いとこ)にでもあげよっかな… (^_^;) 」
ネクタイを袋にしまう母の後ろ姿を見た時… 私はハッとした。
ほんの一瞬で、母がコレを買った時の気持ちを想像した。
きっとセール品のカートにはたくさんのネクタイがあって…
母は一生懸命に選んだに違いない…ヨシカズの為に…って。
これ…喜ぶかな…ってウキウキした気持ちでレジに向かい、
なけなしのお金で…
…体調を崩しながらも懸命に働いたお金で…ヨシカズにあげるんだ~\(^O^)/
…そう思っていたに違いない。
なのに俺…
私は母の好意を踏みにじってしまったのだ。
現実なんてどうだってよかったんだ。
学童保育には使わなくたっていいじゃないか。
「ありがとう」って受け取ればよかったんだ。
…そんな事を考えた私だったが…「ごめん」と言えなかった。
母は笑顔のままだった。
もしかして私に気を使わせまいと、無理していたのかもしれない。
TVを見始めた母の後ろ姿。
その丸めた背中が少し寂しげに見えた。
私は目頭があつくなってしまい…
…「やっぱりちょうだい」って…言えなかった。
… この日の後悔を、何十年も引きずり…
これ程の心残りになるなんて…その時の私は知るよしもなかった。
……………………………………………
若い私はこのエピソードを無かった事にしようとした。
その後、ネクタイの話はお互い、一切しなかった。
数日たてば忘れるが、人生の所々で思い出し、反省していた。
そう思ったまま…後悔したまま…心残りのまま、時は流れた。
……………………………………………
次の年の誕生日。
母は5000円をくれた。
「あんたが欲しいモノ、お母さん分からないから、これで買いなさい (^o^) 」
「本当は10000円あげたいんだけど…ごめんね」
!!!!!…あんたが欲しいモノ…!!!!!
母は………"自分で選べば間違いないよね"………
きっとそんな気持ちで5000円をくれたのだろう。
私はまたあのネクタイを思い出した。
いらなかった訳ではないのだ。
私が変な事を言ったせいで気まずくなって…
受け取るタイミングを逃しただけなのに…。
私はそのお金でシャンデリアを買って母に見せた。
「わぁ~素晴らしいね~綺麗だね~」と母は笑った。
5000円では足りなかったが、そんな事は関係ない。
シャンデリアは紛れもなく、母から貰ったプレゼントなのだ。
今も大事に使っている。
次の年の5000円では、ネコのジグソーパズルを買った。
次の年、母は初めて入院した。
一週間ほどの入院だったが、それが年に数回あり、
亡くなるまで、毎年、繰り返した。
母のパート先のユニオンチーズ株式会社は、
母に、「無理しないようにね」と優しく接してくれたという。
……………………………………………
母の入院中、私は【母よ】という曲を作ったが、
照れくさくて、
2003年のライブに母を招待するまで8年も聴かせられなかった。
そのライブのわずか2ヶ月後…母は天国に逝ってしまったのだ。
ダメだよ…まだだ…俺…ネクタイの事あやまってないじゃん。
……………………………………………
遺品の整理をしていた時、
引き出しの奥を探ると…紙袋があった。
中から出てきたのは ……………… あのネクタイだった。
あれ…?…ケイ君(いとこ)にあげたんじゃなかったの…?
私は涙が止まらなくなった。
ずっと…ずっと心残りだったあのネクタイ。
新品のまま。
母はきっと、コレはヨシカズの為に…と思っていたのだろう。
ヨシカズに似合うかな…
母はネクタイをつけた私の姿を見ないまま旅立ってしまったのだ。
私はネクタイと再会した2003年12月から今日まで、
袋に入れた新品のまま、20年、宝物として大事に保管していた。
……………………………………………
今から7ヶ月前、
私は今書いているこのブログの本編…【夢の続きが始まりました】を、
出版社の自伝小説コンクールに送った。
受賞が決まれば東京の会場で授賞式がある。
私はその晴れ舞台であのネクタイをしめようと思いついた。
セール品…安物…違う…宝物なんだ。
自分にとっての最高のステージに、あのネクタイをしめるんだ!!!
だが…………
コンクールに落選してしまい、その夢は叶わなかった。
ごめんね母さん。
……………………………………………
小説コンクール応募を決めた時、
私は【夢の続きが始まりました】を完結させた。
その後は本が出版され、夢の続きは、夢の達成に変化すると信じていたからだ。
今書いている投稿はただのブログ…?
だが読者は今も読みに来てくれている。
完結させた後も【夢の続きが始まりました】は続いているのだ。
私は出版にこだわりすぎていた。
本にならなくても、有名じゃなくても、あなたが読んでくれる。
夢に辿り着かなくたって今の私のステージはココなんだ。
……………………………………………
私は今、このステージで、ネクタイを自慢したいと思った。
ずっと心残りだった思い。
母が買ってくれた世界一の贈り物。
皆に見てもらうんだ!!!!!
……………………………………………
母さん…
あのネクタイ…袋から出して、ビニルから出したよ。
宝物…皆に見てもらったよ。
ずっと「ごめんね」って思っていた。
でもね…もうこれからは「ごめんね」って思わない。
今日、皆に見てもらう事で…宝物って自慢する事で…
俺、ようやくこのネクタイを受け取る事ができたって思うんだ。
母さん…
「ごめんね」って思い続けた日々は…あの日の後悔は…心残りは…
今、「ありがとう」って言葉に上書き(うわがき)したよ。
……………………………………………
出勤する時の道路沿いに見えるユニオンチーズ株式会社。
もう数十年前になりますが、母がお世話になりました。
母を見捨てず、私たちの生活を支えて下さりありがとうございました。
このネクタイは当時、母が御社で働いたお金で買ってくれたモノです。
今、正式に母から受け取る事ができました。
母は生前、ありがたい会社だ…と言っていました。
息子からもお礼を言わせて下さい。
「本当にありがとうございました」
■ ユニオンチーズ株式会社 はこちら↓■
ユニオンチーズ 株式会社 - チーズ加工、販売 (unioncheese.co.jp)
……………………………………………
母さん…
俺、母さんの代わりにお礼を言っておいたよ。
皆にも会社にも知ってもらったネクタイだからね…ずっと大事にするよ\(^O^)/
そして…来週…
12月27日の命日には、ネクタイ姿でお祈りするからね。
●母よ
https://youtu.be/YDkCRKRJzmg
● 【石川善一オリジナル曲BEST】はこちら↓
https://www.youtube.com/@user-gs4zl5wc5y
● 今、取り組んでいる【小説家になろう】はこちら↓
https://ncode.syosetu.com/n1232ij/
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